トム・クルーズにとって、役を演じるにあたっての激変は初めてのことではない。命の危険を顧みない派手なスタントで知られるクルーズだが、彼の演技に対する常軌を逸したコミットメントは『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』に登場する短気で狂気じみた映画プロデューサー、レス・グロスマンのような奇妙な役柄にも見事に表れている。クルーズは大胆な冒険を好む俳優であり、彼の演じてきた役に何らかの挑戦がなかった試しはない。
そう考えると、アレハンドロ・G・イニャリトゥ監督の最新作『DIGGER/ディガー』での変貌ぶりも、驚きというよりはむしろ長らく期待されていたものといえそうだ。2024年初頭に発表されて以来大きな注目を集めてきた本作のトレーラーが、4月13日から16日(現地時間)までラスベガスで開催されたシネマコン2026で公開され、その前提となるストーリーやクルーズの大胆な変身が少し明らかになった。
トム・クルーズ、「薄毛でビール腹」の男を熱演?
彼が演じるのは傲慢な石油王。彼の行動は環境危機を引き起こし、そればかりか連鎖的に核戦争へと発展してしまう可能性を抱えている。あまりの事態にアメリカ大統領(ジョン・グッドマン)まで関与することになるほどだ。報道によれば、クルーズはケンタッキー訛りの南部アクセントを操り、ブヨブヨのビール腹を隠すことなく堂々とさらし、さらにコームオーバーにした薄毛を披露しているという。
昨年末に公開されたティーザー予告。
実際の映像を観ることはまだできないが、漏れ伝わる情報からはグロスマン的な雰囲気が感じられる。そして、それは大いに結構なことだ。本作は長らくコメディ作品と説明されてきたし、『Variety』によれば予告編を観る限りにおいて、核開発を風刺した1964年の作品『博士の異常な愛情』(スタンリー・キューブリック監督)を思わせるところがあるという。イベントでは、イニャリトゥがクルーズのこれまで見せてきた命知らずのスタントの数々に触れ、今回の変貌ぶりもまた違う意味での「恐れ知らず」であると評している。
正直なところ、それはもはや驚きではないだろう。クルーズに「恐れ」という言葉はまず結びつかない。彼がスクリーン上でほとんど何にでも身を投じる覚悟があるのは明らかだからだ。『Variety』はさらに、本作には前述のキューブリック作品を思わせる「狂騒的な勢い」が感じられるとも評している。イニャリトゥがこの役にハリウッドでも指折りの“ぶっ飛んだ”人物を起用したのも不思議ではなさそうだ。
もちろん、これらすべてがうまくいく保証はどこにもない。プロットはやや荒唐無稽に聞こえるし、クルーズの演技に関する情報も漫画的な誇張を予感させもする。必ずしも悪いことではないが、観客の間で評価が真っ二つに分かれる“好き嫌いの激しい”タイプになる可能性もある。クルーズにいつもの安定したスター像を求めるファンにとっては劇薬となるかもしれない。ワーナー・ブラザースは本作に約1億2500万ドルという巨額の予算を投じており、そのリスクは大きい。しかし、イニャリトゥ監督による2015年の『レヴェナント:蘇えりし者』が興行収入5億ドルを記録したことも忘れてはならない。クルーズの熱演が実を結ぶことを祈ろう。
From British GQ
By Jack King
Translated and Adapted by Yuzuru Todayama



